誓~天才演技者達の恋~
翌日。
明日香はリムジンの中で舌打ちをした。
「何がッ!新人俳優、新人女優の日比野卓也・歌原由梨...演戯祭終了後に熱いキスだッ!!」
明日香の専属の運転手は、いつもより丁寧に運転していた。
窓を開けて、遠くを見つめる明日香。
「小切手なんてやらなきゃ良かった...まぁどうせもう一個持っていたんでしょうけど」
記事の隅に書かれた『撮影者土居朱美』という字を睨む。
リムジンの中に雑誌を捨てると、明日香は窓を閉めた。
運転手は今にも冷や汗をかきそうだ。
「歌原由梨...欲望のためなら何でもするのね...でも教えてあげるわ...あなたじゃ...卓也の心はあなたのモノにならない」
「もちろん演技で白野百合亜を超えることは不可能...」
リムジンがゆっくりと明華学園の門の前で止まった。
運転手がすばやい動きでドアを開けると、明日香は怒りを思わせる表情で降りる。
「明日香お嬢様、行ってらっしゃいませ」
「えぇ、行ってくるわ」
明日香は普通科の校舎を無視して、芸能科の校舎へと向う。
周りからの視線が痛い中、芸能科の校舎を進んでいく。
角を曲がったところで、一人の男にぶつかった。
「城崎賢斗....」
「オッ、霧島明日香さんじゃありませんか...」
「馬鹿にしてるの?...まぁいいわ、卓也は?」
すると賢斗は鞄から週刊雑誌を取り出し、あのページを開く。
明日香は顔を歪ますと、週刊雑誌を奪った。
「日比野卓也ならしばらく来ないと思うよ。もちろん歌原由梨も...。
仕事が盛りだくさんなのは確かだけど、演戯祭終わってのいきなりのスクープに記者達は張り切ってるからね」
明日香は笑うと、週刊雑誌を破いた。
賢斗は目を飛び出しそうになるのを身で感じた。
「それはちょうどいいわ...教えていただける?
あなたの恋人...
菊花ユリアさんについて教えていただきたいんだけど」