誓~天才演技者達の恋~
彼女が演技をする
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___五月半ば_______
「ユリア...?」
香織は家の中でユリアを探し回っていた。
無駄に広い菊花邸。
簡単に見つかりそうも無かった。
「........」
その中でも、厳重に鍵を閉じられた部屋がある。
鎖で何十にもされ、簡単には入れない。
ここには数知られた人しか知らないヒミツが眠っている。
「あたしは気づいたのです!失ってはいけない大事な、大事なモノを...」
香織は息を呑んだ。
厳重に閉ざされた隣の部屋は、数多くの台本が眠っている部屋あり、香織も良く出入りする場所だった。
そこから聞えるのは紛れも無くユリアの声で、演技をしているようだ。
賢斗から聞いていたと言っても、香織の想像を遥かに超えていた。
「ねぇ...どうして私なの...?」
香織はドアノブに手をかけるも、開けられずに立ち尽くす。
ユリアの演技は、声だけでも緊張感や空気感が伝わってくる。
「好きって言ってよッ!!私の事、一回でもいいからスキって...スキって...」
香織はユリアの演技に聞き耳を立てていた。
しかし異変が起こり始めた。
「私は記憶喪失で何にも覚えてない...前は、あなたを愛していたハズ...なのに好きになれない....」
香織は違和感を感じた。
そして『マズイ!!』そう思った。
「生まれ変わってしまった私を...まだ好きでいてくれてありがとう...タクヤ....愛しています....」
――バタンッ
――ドサァァァァァァ
香織は急いで部屋を開ける。
そこには、台本に囲まれ、下敷きになって倒れているユリアの姿があった。