誓~天才演技者達の恋~


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「イッター。
もちろん分かっているでしょうケド、あんたクビッッ!!だから」


明日香は頭に包帯、右足に包帯と不恰好な格好をしていた。

それもそのはず。

明日香はつい一週間前に、運転手の居眠りで事故に遭ったのだ。

頭は軽症、足は全治2ヶ月ほどの骨折だ。


明日香は運転手に判決を下し、ベットに横たわった。

治りそうも無い足を見ながら、天井を見上げる。

VIPルームに通されのはいいのだが、医者や看護士の態度が尺に触っていた。


「しょうがないじゃない!!金持ちなのは事実なんだから!!」


りんごの皮むきをしている卓也は、少々複雑そうに明日香を見る。

まだ一回も切れていない皮を、明日香はもぎ取った。

卓也はため息混じりに明日香を睨むが、病人と考えると気がひけた。


「りんごの皮って、なかなか美味よね」

「皮が好きなんだろう?変わった奴だな」


中にある白い部分は明日香は口をつけずに、ご馳走様というと週刊誌を読み始めた。

卓也はその週刊誌には“自分は載っていない”という確信を持ちつつも、芸能人として内心複雑だった。


「霧島ジュエリーの会長の孫、霧島明日香さん(16)が専属運転手の居眠りで、骨折。専属運転手はクビか?

....あったり前でしょう!!!あいつの罪は重いわよ!!このあたしに、こんな格好させるなんて!!」


卓也は『文・鎌足剛史』というのを見て、悪寒を感じた。

卓也にも鎌足の噂は来ていて、頭のきれも良く、勘もいいという。

ただし欠点として、自分の興味が無い事に関しては、その能力は働かないというのだ。


「俺にも興味を無くして欲しいもんだな」

「...?どうしたの?」


卓也は首を振ると椅子から立ち上がり、鞄から財布だけを取り出した。

「売店」と呟くと、卓也は売店に向ってしまった。

明日香は退屈そうにしながらも、自分について書かれた本を読み返していた。









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