誓~天才演技者達の恋~
その言葉は、全然恋愛対象に見られていない証拠で...。
卓也にとっては、妹を抱きかかえた兄の思いなのだろう。
それが、百合亜にはきつすぎて...。
頑張って、素直になろうとしたのに。
やっぱり、演技でしか、素直になっちゃいけないのだろうか。
「なんで、なんでそんなに普通なの?」
「百合亜?」
卓也の胸を叩いて、知らない間に溢れ出てくる涙を流す。
また、百合亜の変な性格が出てきてしまう。
強がりで、めんどくさい性格が……。
百合亜の突然の行動に混乱するばかりの卓也。
「なんだよ...今度の台本か?」
百合亜は動きを止めて、卓也を見上げる。
こんなことをするのは、卓也からすれば珍しく
こんな感情的な百合亜は、今まで見たことが無かった。
卓也は、目を見開いて百合亜を見る。
それは、怒っている表情でもあり、悲しんでいる顔でもある。
そして、何かを訴えたい顔...。
「台本...?」
「えっ?」
「私の気持ちは演技じゃない!!卓也の馬鹿ッ!」
百合亜は、その場に泣き崩れて訴える。
卓也は、百合亜を目の前にして固まる。
「好き
すき
スキ...
なんで、なんで伝わんないの?」
卓也が百合亜に触れると、パシンッと払い、家に入っていってしまった。
そこで初めて、大変なことをした。
...と卓也が認識したのだった。