誓~天才演技者達の恋~
「じゃあ、仕事だから行くわ」
賢斗はそう言うと、病室から出て行った。
ユリアは枕の下から台本を取り出す。
「私の初恋は賢斗よ...何も怖くない。不安なんてこれッポッちも無い」
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「えっ!?」
香織は咲子の言葉に反応して、咲子の言葉を待っていた。
咲子は診察室の鍵を閉めると、看護士に席を外すように命じた。
「彼女は例を見ないほどに...酷いわ」
「酷い....?」
「そう。飛行機事故がそうとうなトラウマみたいね。
彼女はそれを思い出すかも知れないキーワードを聞いたり、思い出しそうになると倒れて....都合の悪い事は無かった事にするの。
彼女で意思では無いかも知れないケドね。
消えちゃうのよ。都合が悪い事は倒れて、眠っている間に消えちゃうの」
香織は首を傾けた。
咲子は顔を歪めると、白野百合亜が載っている雑誌を取り出した。
「それって...。」
「そう。白野百合亜よ。
でも彼女はもう、戻れない。
そうとうな条件が揃わない限り、菊花ユリアは菊花ユリアのまま、生涯を終えることになる。」
香織は白野百合亜が最後に表紙を飾った雑誌を見ると、悲しそうに笑った。
咲子は付添い人用のパイプ椅子に座り、天井を見る。
「まぁ、あなたが菊花ユリアのままでいい。そう言うなら、私は何も言わないわよ。
彼女はそのうち、自分が記憶喪失と忘れて生活するんでしょうから
でもまぁ...私だった嫌かな。
起きた時傍にいるのは、演技をしながら傍にいた人だなんて。
言っちゃうけどさ、城崎賢斗も大変ね。
あなたの命令で、菊花ユリアの恋人を演じているんだから。」
「....違うわ。賢斗はちゃんと、百合亜を...ユリアを愛しているわ。」
「そうだろうね。だからこそ恐れている。
ユリアが白野百合亜に戻ってしまう日を...。
だって思い出したら、彼女は日比野卓也のもとに帰るんでしょうから。
まぁ、あれよ。
それにビクビクするのは、歌原由梨も一緒でしょうけど」