誓~天才演技者達の恋~
由梨と賢斗が頷きあい、止めに行こうとした瞬間。
卓也がいきなり立ち上がった。
「アガッ!!」
見事に賢斗の頭に激突すると、卓也は怪訝そうに賢斗を睨み、由梨は腹を抱えて笑っていた。
賢斗はため息をつきながらも、自分が悪いと思い謝る。
「後期は出よう。それで世間の注目を浴びよう」
卓也の一言に二人は目を見開く。
由梨は卓也を見ながら、目をパチクリパチクリ。
「卓也が一番、仕事多いのよ?城崎賢斗とは比べ物にならないのよ?」
「おいッ、それは嫌味か?怒らないから言ってみろ」
由梨は賢斗の言葉を無視して、言葉を続けていた。
教師は卓也の言葉に嬉し涙を流している。
『めちゃくちゃだ』と賢斗は呟いた。
「いいんだよ。後期は出よう。スケジュールを調整するように灰田に電話してくる」
「ちょっと!卓也ッ....。」
由梨は諦めたようにため息をつく。
賢斗は卓也の背中を見ながら、違和感に気がついた。
「あいつ...最近...いや、今日。可笑しくないか?」
「やっぱりそう思う?私も久々に会ったんだけど...なんか動揺してるのよね...」
「何にだよ」
「分かれば苦労しないわよッ!!」
由梨の奇声を浴び、耳を塞ぐ賢斗。
由梨は卓也が戻ってくるまで、ぎゃーぎゃー騒ぐ。
「うるさいんだよ!このアホッ!」
「うるさいッ!馬鹿ッ!」
すると耳を塞ぎながら、さりげなく卓也が入ってきた。
二人を睨むと「うるさい」と一言。
「んだよ。いつもの日比野じゃねぇーか」
「そうみたい...何を勘違いしたのかしら」