誓~天才演技者達の恋~
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ユリアは病院をウロチョロしていた。
「うーん、うーん。
病院って、なかなかつまらないよね」
周りの医者達は、慌しそうに動き回る。
看護士も同じで、患者も患者なりに大変そうだ。
ユリアに声をかける男は、どれも付き添いだとかその類。
「ごめんなさい、私には彼氏がいるんで」と言うものの、声をかけられる。
ユリアは何度もその言葉を言っているうちに、可笑しくなってきていた。
「賢斗って有名人なんだっけ?演技...見てみたい」
病院にある献血を呼びかけるポスターには賢斗は力強く、凛々しく写っていた。
ユリアは自分の彼氏とはとても思えなくて、ポスターを見つめる。
そして、その横には日比野卓也バージョンのポスター。
「イッ.....この人....」
“知ってる”そんな言葉じゃ足りない。
ユリアはそう思った。
見たくないのに、見なきゃいけない気がしてたまらなかった。
拒絶する。
記憶が拒絶する。
この人は、思い出しちゃダメって。
「日比野......卓也........」
ユリアはポスターをしばらく見ていた。
そしてユリアに一つの考えが浮かぶ。
「私、この人で思い出しそうになる。
ってことは...会ってみればいいんじゃないかな?」
――ドスッ
荷物が落ちる音がして、ユリアはゆっくりと振り返る。
そこには、目も口も大きく開け、驚いている一人の女の姿。
「百合亜....?」
「はい...?」
明日香はユリアにいきなり抱きついた。