誓~天才演技者達の恋~
ユリアは混乱するも、自分よりも綺麗で、大人の気品ある明日香に何も言えない。
「百合亜!!百合亜!!やっぱり生きてたんだ!!飛行機事故で死んだのは、嘘だったのね」
「えっ.....イッ!!」
ユリアは、今まで感じたことのある痛みを遥かに超える頭痛を感じた。
立っていられそうになるが、明日香に抱きしめられてやっと立っている感じだった。
「百合亜...私の事...呼んで....。
もう一度、明日香って」
「イアッ....誰?誰?」
ユリアは力任せに明日香を払うと、病院内を走る。
追いかけて来ている明日香を撒くために、咲子の診察室に入っていった。
「百合亜!百合亜!」
明日香は咲子のいる診察室を通り過ぎていった。
突然入ってきたユリアに驚きつつも、咲子は震えているユリアの肩をそっと抱く。
「どうしたのユリア」
咲子の言葉にもユリアは首を振る。
“なんでもない”そう言っているつもりだった。
「なんでもなく...見えないんだけど?」
「じゃあ....今は、そっとしておいてくれませんか?心の...」
「整理が必要なのね。分かったわ。」
咲子はユリアから離れると、診察室から出て行った。
ユリアは床に座り込み、自分で肩を抱く。
「どうして....。
私は記憶喪失なんだろう...。」
ユリアは不潔と思いながらも、床に寝転ぶ。
そして天井を見ながら涙を流した。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ....。
苦しいよ、苦しいよぉぉぉぉぉ」
ユリアは胸のうちを叫ぶと、ゆっくりと目を閉じた。
彼女は今のことを忘れるため。
忘れがたいがために、目を閉じた。