誓~天才演技者達の恋~
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「さすが師羅監督と人気を二分する、アオコ監督ね。」
由梨は台本を読みながらそう呟く。
“アオコ”というのは、元々師羅監督の一番弟子であったのだが独立し、今では師匠を追い抜くほどの才能を開花させている。
卓也の衝撃的一言で、後期の演戯祭に出る事になった由梨。
後期の演戯祭まで一ヶ月を切り、学園内もピリピリしてきていた。
「私を見てよッ!あの子じゃなく、私を見て...?」
由梨は仕事場に向う移動中も、ドラマの台本よりも演戯祭のを優先して練習していた。
由梨と卓也と賢斗は、抽選の結果同じ班となった。
今を輝く3人が一緒にいていいものかは考え物だが、学園側としては出てくれた事が奇跡に近いため、それほど気にしていなかった。
「ユイじゃなくて、ユラ....ユラを見て!」
ちなみに、アオコ監督が後期演戯祭だけのために書き下ろした脚本は学園ラブ。
って言っても昼ドラ並にドロドロしているため、青春モノ!にはほど遠い。
ユラ役が由梨。
ユラが恋する、初恋(ユイ)を忘れられない男の子カイは卓也。
カイを憎み、ユラに恋をするアユトは賢斗。
すべてアオコ監督命令のもとである。
『ねぇ、本当に歌原由梨は...日比野卓也と付き合ってるの?
演技を見ている限り....そうは見えないんだよね。
ごめんね。勝手な事言ってさ。
でも....どうして演技以外では笑わないのかを考えると....由梨ちゃんが一番分かってるハズだよね...?』
アオコ監督の言葉を思い出して、由梨は台本を握りつぶした。
アオコは何でも無いかのような顔で由梨に聞いてきた。
その時の由梨は何も言わずに、無でやり過ごした。
「さすが恋愛のプロ....藍己(アオコ)那智(ナチ)....。」
由梨はアオコと言われている監督の本名を呟き、台本を元に戻そうと試みた。
クルクルになった台本を見つめながら、ため息をつく。
「何で芸能界には、女や男がわかんない名前が存在するかな?
アオコ監督...ってさ、女だよね。
女確定ッ!っていう名前だよね.....」