誓~天才演技者達の恋~


由梨は車の中から外を見る。

冬に近づくと夕方6時には真っ暗で、外の景色にはネオンが輝いていた。


「演戯祭...。何かありそうな気がする。アオコ監督...なにか持ってきそうな気がしてならないのよね...」


由梨は鞄の中からスケジュール帳を取り出して、いろいろと書いていく。

信号が赤になり車が止まる。

由梨は右手を止めて、街の大ビジョンに目を通す。


「霧島明日香...無事完治...。
あれッ?もっと早く治るんじゃなかったっけ?
でも...リハビリとかもあるから...。」


由梨は信号が青になり動き出した瞬間、由梨は再び右手を動かす。

来年の春までは休みの“や”の文字でさえ無いスケジュール帳。

卓也と会う日も時間も、だんだん減っていっている事に不安を感じていた。


「別れないわよ。絶対に。」


由梨は車の中に響かせると、運転手に命じた。


「ねぇ、お腹すいたわ。ドコか連れて行って...。記者達が潜んでないとこ」


光を浴びて非日常(仕事)をしていると、日常(プライベート)が影になってしまう。

非日常も日常も程よい明るさなら、影に行かなくたって平気なハズ。

でも由梨のような芸能人は、日常で光を浴びることは禁じられた。

何故なら、人はテレビに影響されることが多いから。


芸能人が美味いって言えば美味しい。

マズイって言ったら、一生マズイ。

そういう仕組みが知らないうちに出来上がっている。

由梨ほどの知名度100%となると影響はでかい。


「私は...憧れていたハズなのよ。非日常に。なのにいつの間にか、日常を求めるようになっていたのね。私からすれば....日常が仕事よ」


由梨は運転手に語るように話すが、運転手の答えは待っていなかった。


「聞いてくれてありがとう。難しく考えないでね。」


運転手はミラー越しに目を合わすと、由梨にお辞儀をした。

由梨も返すようにお辞儀をする。


「着いたら起こして?最近一時間も寝れてないの。....ってことは運転手のあなたも??」




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