誓~天才演技者達の恋~
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「あらッ、卓也...帰ってたの?」
「実の息子に、その一言は無いでしょう」
卓也はリビングのソファーに寝転びながら、母親の麻紀(マキ)に言う。
「今日も一流ホテルでお泊りかと思ったのよ」
麻紀は椅子にかけていたエプロンを着け、せっせと料理を始めた。
嫌味にも聞こえる母親の言葉。
卓也は時計をチラリと見ると、嫌味らしく言う。
「母さんこそ、ドコ行ってたワケ?こんな遅くまで」
「....掃除よ」
「はぁ?ハウスキーパー的な仕事始めたわけ?」
麻紀は首を振ると、冷蔵庫から林檎を取り出す。
早い手際で林檎の皮を剥くと、卓也の前に出した。
「ディナーの前にデザートですか?相変わらずだな。」
林檎を手に持ちながら、鼻で笑う卓也。
麻紀は卓也の顔を見ると、下を向いた。
「百合亜ちゃんの家...白野邸の掃除よ」
卓也は林檎を持ちながら、口を開ける。
そしてそのまま静止していた。
麻紀は林檎を一つ取ると、甘い林檎を口に含んだ。
「口開いてるけど...食べないの?」
「いや、だって...母さんが変な事言うから」
「変な事では無いでしょう?掃除よ、掃除」
麻紀はそう言いながら、鍋の中の具材を混ぜる。
いい匂いが漂う中、卓也はリビングから見える隣の家を見た。
「掃除して、なんになるっていうんだよ。」
真っ白い外観の白野邸。
家主が亡くなり二年近く、はたまた二年以上経っているのに、白野邸は未だに真っ白で輝きを放っている。
卓也は最後の一つの林檎を思いっきり噛む。