誓~天才演技者達の恋~
お辞儀をすると、すぐさま家から出て行った卓也。
麻紀はあの時を思い出し、涙を流した。
「いやだッ、お料理に入っちゃうぅ...」
母親の麻紀は分かっていた。
生まれた時から、結ばれていただろう我が子達の赤い糸。
昔から、百合亜一筋な卓也。
それは、百合亜が死んだと報道されていても変わっていない。
「百合亜ちゃん、死ぬのはまだ早かった....。
百合亜ちゃん。まだ、まだ卓也を連れて行かないで....。
もうちょっと、もうちょっと....卓也を生かせてあげて。」
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卓也は走って、隣の家の敷地に入る。
右手に握られた鍵を使い、百合亜の家に入って行った。
「すげぇー。あの頃のまんまだ」
卓也は感動の声をあげると、二年ほど前までは足を入れていた家を懐かしむ。
百合亜と鬼ごっこもしたし、かくれんぼもした。
鬼ごっこでは、最初は卓也が鬼でも、最後は必ず百合亜が鬼になってしまいピーピー泣いていた。
かくれんぼでは、卓也が見つけ出すことが出来なくて、ピーピー泣きながら出てきた。
「百合亜....。オマエの魂は、アメリカに行く途中か?それとももう、帰って来てるのか?」
虚しい一言と沈黙。
卓也は笑いながら、床に座り込んだ。
麻紀の掃除のおかげで、ホコリまみれの所は無く、すぐにでも人が住める。
だからこそ、百合亜がすぐ傍に居そうで悲しかった。
「ちくしょー。これで汚かったら、なんだかスッキリしたのによぉー。」
卓也は大きくため息をつくと、勢い良く立ち上がった。
その瞬間少しフラッとするが、卓也は足に力を入れた。
「百合亜、見てろよ。
オマエと同じ舞台に立ってから、そこにいく。
それまで百合亜の母さんと父さんで笑ってろ。
俺も、すぐに...“そこで笑うようになるさ”」