誓~天才演技者達の恋~
由梨は舞台袖にいる、賢斗を睨んだ。
嫌な予感が、胸を過ぎる。
「ゆりあ...ユリア...百合亜」
分かっている。
あの白野百合亜は死んだのだと。
でも何かが引っかかり、何かに不安を覚える。
由梨はさっきの着信履歴を消すと、賢斗の傍まで行く。
「で、シーン7の時はあの辺ね」
「あぁ、ハイ。」
「じゃ、もういいよ。ありがとう」
賢斗は挨拶代わりに笑うと、後ろを振り返る。
そこには、いつもと変わりない自信気の笑顔の由梨が立っていた。
由梨は電源を切っていない携帯を、賢斗に返すと、自ら美術スタッフの所に行こうとする。
「あれ?あんなに怒っといて、電源落とさなかったのか?」
「馬鹿ね。メール届いてるのを見たから、落とすのは止めたのよ。急な用だったら困るでしょう?
かと言って、私が中身を見るのも変だしね」
「そう...だよな。オマエは、俺の彼女じゃねぇーもんな」
由梨は頷くと、美術スタッフを呼び止める。
賢斗はいまいち納得いかず、メールを開いた。
「ゲッ、ユリアからだ。」
そう小さく呟きながらも、顔が綻んでいく賢斗。
由梨は美術スタッフと話をする横目。
賢斗を見ていた。
「ねぇ、スタッフさん。」
「ん?どうした由梨ちゃん」
「男が携帯見ながら笑う時って、どんな時?」
男性スタッフは、舞台袖のため大声では笑わなかったが、声を殺して大笑いしていた。
由梨はちょっと不機嫌になりながらも、その答えを待つ。
「約99%。好きな女の子or付き合っている女の子からのメール。または写真だろうね」
「ふーん。そう。」
「なになに、卓也くんが浮気っぽいのかい?」
「違いますよ。卓也はいつでも無表情です。演技以外は」