誓~天才演技者達の恋~


由梨は舞台袖にいる、賢斗を睨んだ。

嫌な予感が、胸を過ぎる。


「ゆりあ...ユリア...百合亜」


分かっている。

あの白野百合亜は死んだのだと。

でも何かが引っかかり、何かに不安を覚える。

由梨はさっきの着信履歴を消すと、賢斗の傍まで行く。


「で、シーン7の時はあの辺ね」

「あぁ、ハイ。」

「じゃ、もういいよ。ありがとう」


賢斗は挨拶代わりに笑うと、後ろを振り返る。

そこには、いつもと変わりない自信気の笑顔の由梨が立っていた。

由梨は電源を切っていない携帯を、賢斗に返すと、自ら美術スタッフの所に行こうとする。


「あれ?あんなに怒っといて、電源落とさなかったのか?」

「馬鹿ね。メール届いてるのを見たから、落とすのは止めたのよ。急な用だったら困るでしょう?
かと言って、私が中身を見るのも変だしね」

「そう...だよな。オマエは、俺の彼女じゃねぇーもんな」


由梨は頷くと、美術スタッフを呼び止める。

賢斗はいまいち納得いかず、メールを開いた。


「ゲッ、ユリアからだ。」


そう小さく呟きながらも、顔が綻んでいく賢斗。

由梨は美術スタッフと話をする横目。

賢斗を見ていた。


「ねぇ、スタッフさん。」

「ん?どうした由梨ちゃん」

「男が携帯見ながら笑う時って、どんな時?」


男性スタッフは、舞台袖のため大声では笑わなかったが、声を殺して大笑いしていた。

由梨はちょっと不機嫌になりながらも、その答えを待つ。


「約99%。好きな女の子or付き合っている女の子からのメール。または写真だろうね」

「ふーん。そう。」

「なになに、卓也くんが浮気っぽいのかい?」

「違いますよ。卓也はいつでも無表情です。演技以外は」



< 84 / 252 >

この作品をシェア

pagetop