誓~天才演技者達の恋~


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何も知らない賢斗とユリアは、キスの後微笑むと、演戯ホールに向った。


「あれ?演戯ホールなんて出来たんだ」

「あぁ、前期からそうなったみたいだな。すごいんだよ。舞台は動くし、もう、なんでもあり」


賢斗の言葉にユリアは目を輝かせる。

演戯ホールまで走っていくと、ユリアは手招きした。

賢斗も笑いながら、ユリアについて行く。


「もう、真っ暗だね。中」


演戯ホールの中はもう真っ暗で、足元のライトだけが頼り。

そのおかげで、賢斗は客席にバレずに済んでいるのだが。


「ねぇ、賢斗の演戯...前で見たい」


賢斗は微笑みながら、後ろの席の真ん中に座らせた。

1000人ほど入れる二階建ての演戯ホール。

その後ろとなれば、一階とはいえ、かなり遠い。


「えっ!?けん「恥ずかしいからここで見て。眼鏡....持ってんだろう?」

「そう...だけど....」


賢斗はユリアの耳元でもう一度「恥ずかしいから」と呟く。

ユリアは渋々okした。

するとユリアは一度席を立った。

正式に完成したパンフレットを貰いに行ったのだ。


「ごめんな。ユリア」


賢斗はそう呟くと、ユリアの鞄から眼鏡ケースを出し、眼鏡だけを奪った。

始まりを知らせるベルが鳴る。

ユリアはギリギリに席に戻り、パンフレットを鞄にしまった。

足元のライトさえも消えて、客席は真っ暗になってしまった。


「あっ!眼鏡」


ユリアは舞台上の人の表情が良く見えなくて、鞄の中から眼鏡ケースを手探りで探し当てると、眼鏡ケースを開けた。


「あれ....ない!?」


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