誓~天才演技者達の恋~


「俺はユイを忘れられない。ただ、それだけだ」

「ユラに惹かれていっている自分は、認めないということか!?」


賢斗は分かっていた。

卓也の演技が止まってしまった理由。

一番後ろの真ん中。

目を輝かせて演技を見ているユリアを見たからだ。


白野百合亜にそっくりなユリアを....。


「卓也、オマエは今、ユラに惹かれつつあるカイだ。」


舞台が暗くなり、次のセットが大急ぎで出される中、賢斗は卓也の腕を掴んで呟いた。

卓也はそれでも、客席の真ん中を見つめている。

真っ暗で見えないハズなのに、卓也には見えているのだろうか?


「卓也ッ!!」

「なぁ、もしカイが...ユラに惹かれてなかったらどうする?」

「はぁ!?何意味わかんねぇーこと...」


舞台上のライトが付く。

賢斗が卓也の腕を掴んでいるのは、観客から見れば演出だと考えたのだろう。

卓也は賢斗の腕を振り払うと、舞台から降りた。


「キャァー!」


アイドルよりも人気がある卓也。

観客にいる女性人は歓声を上げた。

二階の後ろにいる取材班も、ここぞとばかりに写真を撮る。

一本のライトが、卓也の上を。

まるで演出かとも思わせるが、させているのはアオコ監督。

そして、もう一本のライトが由梨の上を。


「カイ...」

「ゆ、ユラ...」


由梨は一階の客席の一番後ろから、登場した。

そして、卓也に向う途中に偶然にも目に入った。


「百合亜!?!!!!!」


声には出さなかったが、由梨はパニックを起こした。

目に入った女は、由梨を輝きの瞳で見ていて、その顔は....
由梨の永遠のライバルの姿そのもの。

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