誓~天才演技者達の恋~
由梨は唇を噛んで、卓也に思いっきり抱きついた。
卓也は無表情で受け止めると、演技の顔に戻る。
でも視線は、百合亜にそっくりな彼女を見たまま。
「私だけを見てッ!」
「........」
「ユイは死んだの、ユイは死んだのよッ!!」
由梨は涙を流すと、卓也と唇を重ねた。
卓也は驚いた様子さえ見せずに、由梨の身体を抱く。
舞台上と客席が真っ暗になると、卓也はカイになりきって演技をする。
「俺の中に、ユラが生きてもいいのかも知れないな」
観客席で拍手が巻き起こる。
サングラスをかけていた一人の男は暗闇の中、一番後ろに座る女を見た。
「日比野卓也と歌原由梨、城崎賢斗を混乱させたのは...彼女か」
師羅は不気味に笑うと、演戯ホールを後にすることにした。
その時、師羅は目を見開くことになる。
3人を混乱させていたのは、白野百合亜だったからだ。
「冗談...だろう?」
師羅はユリアの顔を見つめると、携帯を取り出し、ある人物に電話をかけた。
すべての確認が終わると、師羅はメモ帳を鞄から取り出した。
「面白くなりそうだねぇ...演技の世界」
「父さん?後期の演戯祭はどうでした?ハプニングが多すぎて、大変だったんですけど」
綺羅は実の父親に、意見を求めた。
師羅は実の息子に笑うと「良かったよ」と一言。
「まぁ、3人は...ただ演技が上手いってだけだろうね」
「えっ....?」
「天才を見つけたよ。興奮するねぇー。白野百合亜に出会った時以上に興奮するよ」
師羅はサングラスをかけ直した。
なんせお忍びで、師羅はここに足を運んでいたのだから。
「彼女の瞳...必ずこの世界に来るだろうね。
まぁ、楽しみにしてるよ。」