誓~天才演技者達の恋~



それは母としては、不思議かつ謎の言葉だが、これが素直な気持ちだった。



「演技をしている百合亜は凄いケド、なんだが別人を見てるみたいだった。
卓也くんへの気持ちを隠して、自分の中に押し込んでいたからかな?」


「....知ってたの?」


「当たり前です。
世間は演技で生きれても、親の前では演技なんて通用しませんよ。

まぁ、百合亜はマジメさんだから、家に帰ってきても、天才白野百合亜で居続けたけど。

だからかな、素の白野百合亜を見るのは、なんだか懐かしいわ」



さっきの一言と矛盾していそうだが、百合亜には何よりも嬉しい言葉だった。


ずっと張っていた糸を切られた。

ううん、切って貰ったんだ...と百合亜は思った。



そこからワーンと泣いても、母親は笑って傍に居続けた。



「百合亜ちゃん。ありがとうね、私の夢をかなえてくれて」母の感謝を聞きながら、百合亜は夢の中に入っていった。


「百合亜は寝たのか」


「えぇ、寝ました...。女の子は大変ね。」



まるで人事のように話す母親の肩に、その旦那は静かに手を置く。


世間では、天才少女。

でも彼ら夫婦にとっては、天才でも何でも無い。

まだまだ無力の子供。


愛しい、愛しい子供だった。



「幸せだな...」

「えぇ、とっても。」



夫婦は笑うと、アルバムを一つ一つ戻していった。



「いつかきっと、卓也くんも同じ舞台に立つのだろうか?」


「さぁ、どうでしょう?まぁ楽しみではありますけど。
父親としては複雑?」



百合亜の母親は、クスリと笑うと、旦那の頬にキスをした。


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