誓~天才演技者達の恋~
卓也は、灰田からのメールにぎこちなく笑う。
「無理だよなァ...百合亜を忘れがたいがために、由梨と付き合うなんて」
卓也はそう言うと、灰田との待ち合わせ場所まで向う。
すると、前から赤いコートを着こなした明日香が歩いてきた。
「明日香」
「あらッ、ずいぶん久しぶりね。変装さえしてないのに、人が寄ってこない。あなたはある意味凄いわ」
明日香は笑いながら、卓也の肩を叩いた。
卓也は何も言わず、叩かれるだけ。
明日香はそんな姿を見て、大きくため息をついた。
「そんな仏頂面!よく出来るわねッ!」
「こっちだってな、いろいろあるんだよッ!」
「何よ、いろいろって!!無表情から、仏頂面から...何を読み取れって言うの!?」
明日香が勝ち誇りながら鼻で笑うと、卓也はかったるそうに口を開く。
「百合亜にそっくりな奴を見たんだ」
「....病院で?病院で見たの!?」
明日香の予想以上の食いつきに、卓也は混乱しながらも話を続ける。
「病院じゃない。後期の演戯祭で...座ってた」
「私は...病院で見たの。百合亜って読んだら、反応してくれたの」
明日香の話を聞きながら、卓也は看護士達の話を思い出した。
名前がユリアで、百合亜の面影を持つ少女。
「菊花ユリアだ....そうだ。菊花ユリアだよ」
明日香もハッとし「菊花ユリア」と呟いた。
明日香と卓也は見つめあい、ある一つの可能性を思いつく。
「「まさかねぇ....」」
ユリアが百合亜かを調べる方法はただ一つ。
あのネックレスを持っているか。
それだけだった。
「ねぇ、最後に聞くけど...。
歌原由梨はどうするの?このまま交際をズルズルと引きずっていくのかしら?」