誓~天才演技者達の恋~
今まで声を出す人がいなかったのに、ユリアが大声を出すと、みんなして喋り出す。
それが一つの街のような風景を作り出していく。
ユリアは頷くと、一歩ずつ歩きだして、ワザと転んだ。
「か、監督!!」
「凄いなぁ。あそこまで出来るとわ」
「へぇ!?」
師羅は舞子を見ると、首を振った。
二番弟子はその姿を見て、舞子は二度と師羅の作品には出れないな...と思った。
ユリアは靴を脱ぐと、ヒールが折れたことをアピールする。
スタッフ達は不思議気に見ているが、その瞬間、エキストラ達の目が変わった。
ユリアにいた人達が、ユリアに冷たい視線を送る。
それは、まるで街そのものである。
「周りを巻き込む演技...白野百合亜だ。」
「白野百合亜...あぁ、約三年前に亡くなった。」
「そうだ。俺はあの時も、白野百合亜という天才をエキストラの中から見つけたんだ....。
芸能界にいらっしゃい。菊花ユリアさん」
師羅はそう呟くとカットをかけた。
そして、ユリアを呼び出す。
「はじめまして、師羅監督」
『はじめまして、師羅監督』
「女優を目指しています、菊花ユリアです。何か演技で問題でもありましたか?」
『女優を目指してます、白野百合亜です。何か演技で駄目なところありましたか?』
師羅は数年前を思い出していた。
キラキラした瞳で、周りを圧倒させ、雰囲気でスターを言わせるような少女。
菊花ユリアが確実に、白野百合亜とぴったり重なった。
「キミの演技力には、ビックリだよ。どうもありがとう」
「???勝手なことしてすみません!」
「いいんだ。君のおかげでいい絵が撮れた」
すると師羅は右手を差し出す。
ユリアもそれに答えるため、手を差し出した。
「どうだい?俺のもとでデビューしないかい?」