誓~天才演技者達の恋~

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「美星堂(ビセイドウ)のCM?」

「そうだ。師羅監督が手がけることになってね。
美星堂の新化粧品をつけた女に、卓也が恋におちるっていうストーリーCMさ」


卓也は移動中の車の中で、灰田からの次の説明を受けていた。

台本無しのCM。

卓也には不安しか無かった。


「その女っていうのは...?まさか、由梨や舞子じゃ...」

「いや、違うよ。相手は知らないけど、新人女優みたいだよ。師羅監督が、卓也の出る“愛の時間”....そのエキストラの中から見つけたらしい」

「大丈夫かよ....それ」


卓也はそう呟くと、車の窓を開けて、外の空気を吸う。

街の看板は、卓也・由梨・賢斗が占めており、化粧品になると、ほとんどが由梨だった。

台本無しの化粧品CM。

これだったら由梨との方がいい。と考えている卓也だった。


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「美星堂のCM。台本無いんですよね」


和人はユリアの言葉に頷いた。

ユリアは不安一色の顔色を見せると、由梨の写真が大きくなっているポスターを見て、大きなため息をついた。


「私...自信ないです」

「まぁまぁ、相手は有名な人だから大丈夫だよ」

「誰ですか?」


和人は言葉を詰まらせると「知らない」と呟いた。

嘆きながら、ユリアは車の中で寝転ぶ。


「撮影の時だけは、その人を恋に落とさなきゃいけないんですよね?
私...魅力無いんですけど...」


「ハハハ。まぁ頑張ってよ。世間に菊花ユリアを知らせる、第一歩になるんだから」

「そうですよね。分かりました。頑張ります」


スタジオに着くとユリアは表情を変えた。


「私は今日から...前の自分を取り戻すために演技をする。

私は...菊花ユリア。」
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