Pianissimo
「津々稀先生! 授業、腹が痛いんでお休みします!」

「お腹痛い奴がそんな元気なわけないだろう。大人しく座りなさい」

「ちぇっ。もう、これからケチケチ先生って呼んじゃうからねっ」

「はい。授業を始めます」

「無視するなーッ!」

クラスに笑い声が響く。音楽の時間は毎回こんな感じ。

私が、友達曰く“馬鹿な事”をして、それを先生が冷たくあしらうと言う私にデメリットしかないやり取り。

それでも私は、この音楽の時間が一番好きだったりする。

とりあえず、みんな座っている中で私だけ立っているのも気まずかった為、先生への文句をぶつぶつ言いながら椅子に座った。


ここ西原高校は、首都に近い場所にはあるが対して有名ではない至って普通の学校である。

学力も普通だし、生徒もかなり荒れているわけでもない。何と言うか、平和な学校だと思う。

…制服は結構可愛いと思うけどね。

そんな西原高校に通う私――神原 真子(かみはら まこ)は、一週間前入学したばかりのどこにでもいるような一年生である。


「真子ー。あんた大人しくしてれば美人なんだから、ちょっと黙ってなさいよー」

「美人? え、何それお世辞は良くないよ、美樹」

「…いくら矢島先生の事が気になるからって…ねぇ」

「ちょ! 何でそうなるの!」

私の隣の席に座っている真っ黒で綺麗な長髪で、私とは正反対なお嬢様みたいな子――小林 美樹(こばやし みき)は、私が高校に入って初めて出来た友達。

矢島先生と言うのは、津々稀先生の苗字で――矢島 津々稀(やじま つづき)の事である。
言い忘れていたが、先生は私たち1-Aの担任でもある。


「神原、本当に腹痛いんだったら保健室行っていいからな」

「…先生って、実は優しいんですね! 先生の優しさにお腹の痛みもなくなりまし…いだっ」

「調子に乗るな」


音楽の先生であり私のクラスの担任は、マジックペンを投げつけてくる先生です。


< 2 / 11 >

この作品をシェア

pagetop