Pianissimo
ガラガラとドアが開き、そこから美樹がひょこりと顔を覗かせた。

綺麗な長い黒髪が目立つ白い肌。


あ…、先生が美樹の事見てる…。

何で、見て欲しくないだなんて、おかしい。



「真子! ごめんね待たせちゃって!」

「だ、大丈夫! 先生と話してたから退屈しなかったしねー」

にこにこ笑いながら美樹は私の側に来る。

それにつられて私も笑った。

「ほら。部活終わったんだったら早く帰りなさい」

「はーい」

そう返事をして美樹と一緒に音楽室から出た。

美樹が来てから一度も先生を見なかったのは、美樹を見ている先生を見るのが辛かったから。

私以外見ないでほしい。だなんて、言えるわけない…。


だから私は、先生が私の事をじっと見ていた事を知らなかった。

…知る術もなかった。
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