oneself 後編
彼との時間は、あっという間に過ぎた。


20分ってこんなに短かったっけ、と思うほど。


彼は最後に、「店長も君に期待してるよ」と、言ってくれた。


「俺の席に安心してつけられる子が入ったってね」、そう付け加えて。


望月さんにも、店長にも、そう思ってもらえるのは、すごく嬉しかった。


その言葉に、あたしがやる気が湧いたのは、言うまでもない。


あたしは彼にお礼を言って、その場を離れた。


前田さんの席に戻る前に、トイレに寄る。


そこで、翼と偶然出会った。


「前田さん、かなり淋しそうだったよ」


ケラケラと笑う翼。


少し酔っているのだろうか。


「色かけちゃいなよ、絶対引っ張れるよ」


そう言ってあたしの肩をポンポンと叩くと、翼はあたしの返事も聞かず、席へと戻って行った。


色をかける?


ロッカールームで聞いた言葉。


意味の分からなかった言葉。


色って一体、何なんだろう?


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