oneself 後編
終電の関係か、満席だった店内は、少しだけ空席が出来ていた。


待機用のソファーに座ると、翼は何やら手帳に書き込んでいる。


「さっきはありがとう」


そうお礼を言うと、翼は首をかしげた後、「あ、連絡先の事ね」と、笑って言った。


前田さんの席で感じた事を、相談してみようかな。


そう思って、話そうとした瞬間、スタッフが翼の名前を呼んだ。


あたしはしばらくの間、店内の女の子の接客を眺めながら、これからの事を考えていた。


相変わらず、最初に隣に座っていた子は、別の客の席でも、やたらとくっついて接客していた。


間もなくして、あたしもスタッフに呼ばれ、閉店までの間、3つの席を回った。


店長に呼ばれ、給料を貰ったのは、1時30分過ぎだった。


送迎が必要か聞かれたが、断った。


翼とこの前のように、始発までどこかでご飯を食べる約束をしていたから。


着替えを済まし、お店を出る。


雨が降った後の、独特の匂い。


蒸し暑い空気が、体中にまとわりつく。


この周辺の空気は、同じ大阪でも、地元とはどこか違うように感じた。


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