oneself 後編
「乾杯!」


翼はビールを、あたしはカシスオレンジを注文し、哲平の持つビールグラスにカチンと当てる。


初回は、ホストの飲み物代も込みの値段だそうだ。


「気に入った子おる?」


アルバムをペラペラとめくる翼に、哲平が尋ねる。


「う~ん、この人かな?」


そう言って、翼が指さしたのは、ナンバー1の聖夜さんだった。


「お、さすがお目が高い!」


あたしもアルバムを覗き込むと、確かに整った顔で、他のホストよりも輝きというか、オーラというかが違う気がした。


でもあたしは…


もし、ここで初めて哲平と出会ったとしても、哲平を選ぶような気がしたんだ。


「ちょっと待ってて」


そう言って席を立った哲平。


翼があたしに顔を近づけて、「どうせならナンバー1の人と喋ってみたいよね」と、笑った。


きっと翼は、そんなに真剣に聖夜さんを選んだ訳じゃない気がした。


「ごめん、ちょっと聖夜さんが席来るまで、俺とこいつで我慢して」


戻って来た哲平が連れて来たのは、ぼうず頭の少しふっくらとした男の子。


え、この人がホスト?


失礼だけど、そう思ってしまった。


そして、その人は見た目通りの3枚目で。


くだらない事で大笑いしながら、時間は過ぎていった。


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