oneself 後編
コウキさんが来たのと同時くらいに、翼についていたスタッフも変わった。


「聖夜さんには敵わへんけど、笑いたくなったら俺の胸に飛び込んでおいでや!」


両手を広げて、翼に笑いかける彼。


翼は呆れたように、「ないない」と、笑った。


結局、彼は最後の最後まで3枚目だった。


「初めまして、シュンです」


そう言って、新しくやって来た子が名刺を差し出す。


中学生のように幼くて、でも甘いジャニーズ系の顔の彼は、スーツよりもカジュアルな服装の方が似合いそうだった。


懸命に翼に話しかける彼に、翼もまんざらではない様子。


翼はきっと、母性本能をくすぐるタイプが好きなんだと思った。


「てか未来ちゃん、しばらく見いひん間に綺麗になったな」


コウキさんがあたしのグラスの水滴を拭いながら誉めてくれる。


「ありがとうございます…」


そう答えたあたしの視線は、コウキさんを通り越し、哲平の方を向いていた。


哲平との関係を知っている彼の前で、露骨に態度に出しちゃいけない。


分かってはいても、気になってしまう。


楽しそうに笑い合う二人。


そこには間違いなく、客の哲平に対する想いがあるような気がした。


「哲平も心配やな、こんなかわいい彼女やと」


コウキさんはきっとそんなあたしに気付いていたと思う。


でも気付かないふりをしてくれていた。


哲平が心配?


違うよ。


いつだって、あたしの心配の方が、大きいに決まってるんだから。


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