oneself 後編
哲平と新人の子と3人になった。


哲平を尊敬しているという新人の子は、ヒカルといった。


無邪気に話すヒカル。


悪気はないだろうし、彼はあたし達の関係を知らないだろう。


でもヒカルの話に、あたしの心の中に陰りが出来ていく。


ヒカルの話す内容は、哲平から聞いていない事ばかりだったから。


哲平がホストを始めて2カ月半。


哲平なら、それなりに指名もあるだろうとは思っていた。


以前コウキさんも、新人の中では1番だと言っていた。


でも、それはあたしの想像以上だった。


先月の売上で、哲平は惜しくもナンバー6で、ナンバー5内に入れなかった事を知った。


現在、不動のナンバー1は聖夜さん。


コウキさんも、ナンバー2だそうだ。


哲平は、彼らと比べると売上の差はすごくあるし、まだまだだと言った。


その顔は、すごく真剣で。


哲平は本気で頑張っているんだと、改めて思った。


そしてヒカルは、「そんなに彼女がいっぱいいると、営業も大変ですよね」と、笑いながら言った。


きっと彼は、冗談のつもりだったと思う。


でもその瞬間、哲平の顔が引きつるのが分かった。


「俺は色営業じゃないよ」


哲平はすかさずそう言って、ヒカルに軽くデコピンをした。


< 141 / 244 >

この作品をシェア

pagetop