oneself 後編
その他にも、沢山の事を知った。


哲平のカラオケの18番は何だとか。


それは、文化祭のバンドの時、ラストに歌った曲で。


愛する人に捧げるバラードの曲だった。


哲平のお得意のシャンパンコールは何だとか。


あたしはそれを見た事もないし、おろした事もなくて。


でも、哲平に高額のシャンパンをおろす客もいるんだと思った。


それに、ここのお店は雑誌やネットに広告を出していて。


哲平もそれに顔写真を載せている事を知った。


あたしの働くお店でも、雑誌やネット、案内所のパネルにしても、顔出しをしている女の子はいる。


ただ、あたしは知り合いにバレるのが嫌で、店長から出てみないかと聞かれた時は、迷わず断った。


哲平がホストをしているという事が、高校時代の友人達にも知れ渡ったかも知れない。


それを知った時、みんなは何て思うだろう。


もうあたし達は別れたと思うかも知れない。


あたしが振られたと思うかも知れない。


とにかく1部が終わるまでの数時間。


あたしはヒカルの話を聞きながら、隣にいる哲平の顔を、真っ直ぐに見られなくなっていた。


< 142 / 244 >

この作品をシェア

pagetop