oneself 後編
二人で黙々とケーキを口に運ぶ。


周りの客はキャッキャキャッキャと盛り上がっているのに、この席は何て静かなんだろう。


でもあたしは待っていた。


翼が何か話してくれるのを。


ケーキも残り少なくなり、あたしは一度フォークを皿の上に置くと、ドリンクを数口飲み、向かいの翼を見つめた。


そんなあたしの視線に気付き、翼が顔を上げる。


「ハル最近優しいんだよ」


そう言って、翼はフフっと笑う。


同じように、翼もフォークを皿の上に戻す。


以前のように、家に泊まりに来るペースも増えた。


本彼だと噂されていた子は、最近お店で見かけなくなった。


そんな事を少しずつ話す翼に、優しいんなら良いじゃないかと安心した。


もしかしたら、嫌な話だなんて、あたしの勘違いだったのかも知れない。


そんな風に思った時だった。


「あたしさ、今のお店辞めるよ」


いつもより少しだけ低い声で。


でも覚悟を決めたような強い声で。


翼はそう言った。


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