oneself 後編
「へえ~!」


「え、じゃあ時間的にも、俺達が初めてついた客って事?」


こくりと頷くあたし。


「ほら、お兄さんがミライにとっては初めての人なんだよ」


何だか他の意味にも取れそうな言葉を口にする翼に、隣の男はまんざらでもなさそうな顔で、「初めての人か」と繰り返していた。


「…て事で、初めてのミライちゃんをお祝する為に、何か飲んでいいですか~?」


二人の男にニッコリととびきりの笑顔で尋ねる翼。


さすがだと思った。


さっきの15分の間に、翼から教わった事。


女の子のドリンク代は、お客さんが出さなければならない。


「何か飲ませてもらっていいですか?」


そうかわいく言えば、たいていのお客さんは「いいよ」と言ってくれるらしい。


でもそれは、初めてあった人に「おごって」と言ってるようなもんだ。


まぁそれが、仕事なのだけれど。


でもそんな翼の一声に、二人は「それはお祝いしないとね!」と、快く受け入れてくれたのだった。


翼はビールを。


あたしはウーロン茶を注文する。


それらが運ばれてくる間に、翼が少なくなっていたグラスのブランデーを作り直す。


すぐさま運ばれてきたあたし達のドリンクを手に取り、あたしの隣にいた男が、大きな声で乾杯の音頭をとった。


「ミライちゃんと俺に乾杯!」


おどけたように、でも少し照れたような彼に、思わず笑ってしまった。


もちろん、翼とその隣の男から、「何それ?」と突っ込まれていたけれど。


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