oneself 後編
間もなくして、「今日ハルと同伴なんだ」と、翼はいそいそと席を立った。


あたしもどうしていいかわからずに、続いて席を立つ。


別れ際、「呆れないでね」と、翼は少し悲しそうな表情を浮かべて言った。


あたしは、「うん」と、笑顔を作ってみせた。


別に、呆れたりなんかしない。


仕事に偏見がある訳でもない。


でも…


して欲しくなかった。


電車に揺られながら、窓ガラスに映る自分の姿を、ぼんやりと眺める。


あたしは翼を止める事が出来なかった。


だってもし誰かがあたしと哲平の関係を聞いて、何かを言ってきても。


別れる事も、嫌いになる事も、出来ないから。


何が普通かなんて分からない。


でも、普通ならおかしいのかも知れない。


でも、ただ好きなだけなんだ。


好き過ぎるだけなんだ。


あたしも、翼も。


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