oneself 後編
閉店時間を迎え、ロッカールームで着ていたドレスを脱ぐ。


翼から貰ったドレス。


ピンク色のそれは、翼が以前、あたしの方が良く似合うと言ってくれた物だった。


何となく悲しくなって、ロッカーにドレスをぶち込むと、急いで私服に着替えた。


今から哲平とご飯を食べる約束をしていたから。


忘れ物がないかと確認していると、隣で着替える女の子の会話が耳に入ってくる。


「カリンっていたやん?」


その名前に、あたしは思わず耳を澄ました。


「あの子、今ソープにいるらしいよ!」


「マジで〜!」


別にカリンとはあれっきり。


あの日、偶然出会っただけ。


だたそれだけ。


でも…


何となく、胸が締め付けられた。


どこのホストクラブに通っているだとか、そこのホストに夢中だとか。


そしてそれは間違いなく、騙されてるだけなのにね、とか。


ケラケラと笑って話し続ける彼女達。


耳が、胸が痛かった。


「お疲れ様です」


少し控え目にそう言うと、あたしはその場を後にした。


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