oneself 後編
「へぇ」


鶏のから揚げを口にほおりこみ、さほど興味なさそうに相槌を打つ哲平。


あたしは予想外の反応に、目を見開いて言った。


「え、それだけ?」


あたしのお店と哲平のお店の、ちょうど中間辺りにある居酒屋。


一杯目の飲み物が無くなり、二杯目を注文した直後だった。


「最近、翼ちゃん見いひんな」


そう言った哲平に、あたしは全てを打ち明けた。


翼が別のホストクラブに通っている事は、哲平も知っていた。


翼は酔う度に、ハル君の愚痴を言っていたから。


その度に哲平は、「好きなんやな」と、笑っていたっけ。


哲平は不満げに見つめるあたしから、フイッと眼をそらした。


自分も翼を止める事が出来なかったくせに、哲平に何を求めているんだろう。


そっぽを向く哲平を、あたしは見つめ続けた。


そんなあたしの睨むような視線に気まずくなったのか、哲平はこちらを向くと、小さく息を吐き出した。


「しゃーないやん、翼ちゃんが決めたんやし」


そう言って、運ばれて来たばかりの焼酎の水割りを手に取り、ゴクゴクと音を立てて喉の奥に流し込む。


「じゃあ、あたしがしても仕方ないで済むの?」


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