oneself 後編
それから10分ほどして、幸子はやって来た。


あたしの顔を見るなり、「昨日の事はまたゆっくり話すから、今日は盛り上がろう」と、笑った。


少し腫れたような瞼が気になったけれど、あたしは何も言わず頷いた。


その30分後には、哲平も姿を現した。


隣のテーブルに座った哲平は、あたしの顔を見ると軽く右手を上げた。


あたしはそれに、小さく手を振り返した。


この席の話題は、最近彼氏が出来たという木部ちゃんののろけ話のお陰で、あたしにも幸子にも、自然と笑みが溢れた。


哲平の座るテーブルでも、昔のようにじゃれあっている様子を見ると、心配するような話はしていないだろうと胸を撫で下ろした。


料理を取りに行ったり、違う席に喋りに行ったり。


松山先生の席にも行った。


そうしているうちに、あっという間に時間は過ぎた。


最後のビンゴ大会では、あたしはリーチにもならなかったけれど、景品はドンキで買った、ものすごくつまらない物だった。


でも、久し振りに心の底から笑えた。


2時間が経って、次の予約が詰まっているという会場から、慌ただしく追い出された。


2次会の予定は特にはなかったようで、そこで解散という形になった。


時刻はまだ7時を回った頃。


あたしは幸子や哲平を含めた数十人で、カラオケに行く事になった。


バスケ部とサッカー部が中心の、卒業式の最後に喋っていたメンバーだった。


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