oneself 後編
会計を済まし、カラオケ屋を出ると、辺りはもうすっかり人気がなくなっている。


ミナミなら、一番人で溢れている時間なのに。


しばらくそこにとどまって、あたし達は最後の他愛もない話をした。


そして、時折吹く冷たい風に、思わず体をすくめた時だった。


「じゃあ解散!」


数メートル先で、誰かの声が聞こえた。


「今から彼氏とお泊りなんだ」


そう言って、木部ちゃんは照れたように笑う。


聞けば、彼氏が近くまで車で迎えに来ているそうだ。


「ばいば〜い」


大きく手を振って、木部ちゃんは幸せいっぱいの笑顔で帰って行った。


「帰ろっか」


駅へ向かう人、自転車で帰る人、飲んでいない人の車で帰る人。


あたし達はそれぞれの家路に向かって、ぞろぞろと歩き出した。


「未来!」


哲平の声が聞こえる。


ゆっくりと振り向いたあたしに、駆け寄って来る哲平。


「今から大丈夫?」


あたしは大きく頷いた。


駅へと向かうみんなに別れを告げる。


そして、駅とは反対方向に歩き出す哲平の背中を、あたしは小走りで追いかけた。


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