oneself 後編
哲平は高校時代、自転車で学校まで通っていた。


今日はおそらく、タクシーか何かで来たんだろう。


ここから大通りに出れば、タクシーはいくらでもつかまる。


あたしはてっきり、哲平の家に向かうんだと思っていた。


でも哲平は、大通りに向かう様子もなく歩き続ける。


「どこ行くん?」


あたしは哲平のジャケットの裾を引っ張りながら尋ねた。


「やっぱり今日、2部から出勤するわ」


「えっ?」


今日は、長い時間一緒にいれると思っていたのに…


落胆するあたしに、哲平は携帯を握り締め、数人の客から連絡があった事。


その客達の売上が、ナンバーに大きく影響する事。


そして、現時点でコウキさんの売上を抜いた事を明かした。


ナンバー2。


一体どのくらいの売上を上げているんだろう。


全く想像もつかない。


手を伸ばせば届く距離にいるのに…


あたしは哲平の左手に、そっと自分の右手を重ねた。


哲平の手は、あたしの手より、冷たかった。


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