oneself 後編
あたしの歩幅でゆっくりと歩いてくれる哲平。


こういう優しいところは、昔から大好きだった。


学校帰り、自転車を押して歩く哲平の隣は、あたしだけのものだった。


今は…




5分ほど歩くと、見覚えのある風景が目に飛び込んできた。


高校の校舎のすぐ裏にある、遊具はブランコと鉄棒しかない、小さな公園。


職員室から丸見えで。


うちの生徒がすぐ脇を通って帰る。


周りから冷やかされるのが苦手で、高校時代に来た事は数えるくらいしかない。


でも、日の暮れが早い冬の日に、ここでキスをした記憶もあった。


「懐かしい〜」


ふいに漏れた言葉に、哲平がギュッと掌に力を込める。


あたしはそれを強く握り返した。


小さな街灯を頼りに、二つ並ぶブランコに腰をおろす。


空を見上げると、くっきりとした三日月が浮かんでいた。


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