oneself 後編
「未来」


少しボーっとしていたあたしの耳に、低くて優しい声が届く。


あまりの甘い声に、あたしの胸がトクンと音をたてた。


「ん?」


視線を戻すと、少し真剣な表情の哲平。


シンとした空気の中、あたし達の視線が重なり合う。


「これ」


そう言って、哲平はあたしに小さな箱を差し出した。


トクンッ…


さっきよりも大きな音で、胸が高鳴った。


恐る恐る手を伸ばして、両手にそれを包み込む。


淡いブルーの箱に、白色のリボン。


箱に書かれた有名ブランドの文字。


あたしは大きく目を見開いて、哲平を見つめた。


この暗さに、少しずつ目も慣れてきていた。


それでも、紅潮する顔の色までは分からないけれど。


きっと哲平は、真っ赤に顔を染めているような気がした。


鼻の下をこすり、哲平はそれを隠すように喋り出す。


「あげる。俺がお前を好きな気持ちは何も変わらんから…その証」


あたしが一番欲しかった言葉だった。


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