oneself 後編
しばらくして、漫画喫茶を出ると、あたしは哲平に電話をかけ直した。


こんな気持ちになったって、やっぱり会いたくて。


漫画に夢中で気付かなかった、そんなつまらない嘘をついて。




お店に着くと、哲平は相当酔っ払っていた。


さきほどまで、オーナーと聖夜さんとコウキさんと一緒に他店のイベントに出席し、そこで大量のシャンパンを飲まされたそうだ。


客との用事じゃなかったんだ。


そう思うと、少しホッとした。


「あ、未来さん、月末にオーナーのバースデーイベントがあるんですよ」


哲平が別の席に移った後、やって来たヘルプのルイがそう言った。


「へぇ」


あたしは興味なさげにそう返事すると、店内をぼんやりと眺める。


この中に、書き込みをした客がいるのだろうか。


そんな事を考えながら。


ルイは会話を続けようと、そんなあたしに言った。


「絶対来て下さいね」、と。


きっとこの子は、あたしと哲平の関係を知らない。


でも、あたしを客扱いする態度に、無性にイライラした。


哲平の客が、派手にシャンパンをおろしている。


もっともっとおろしてよ。


もっともっと使ってよ。


そして…


哲平をナンバー1にしてあげて。


< 190 / 244 >

この作品をシェア

pagetop