oneself 後編
「ミライちゃん、ちょっといい?」


閉店後、お店を出ようとしたあたしを、呼び止める声が聞こえた。


振り返った先には、ヒナタさんの姿。


首をかしげるあたしに、「時間があれば、付き合って欲しい所があるの」と、彼女は微笑む。


明日は朝から学校だし、漫画喫茶かサウナにでも行って、仮眠を取る予定だった。


でも…


「大丈夫です」


あたしはそう答えていた。


「今日はありがとうね」


最後の席にあたしを呼んだのは、二人の同意の上でだった事を、この時に明かされた。


きっと二人っきりになれば、お互いに泣いてしまいそうだったから。


そしてヒナタさんが辞めた後、望月さんはあたしを指名すると言ってくれていたそうだ。


そんな話をしながら歩いていると、見慣れたビルの前に辿り着いた。


そう、哲平のお店が入っているビル。


「今日、オーナーの誕生日らしいから」


そう言って、ヒナタさんはニコリと笑う。


あたしは訳が分からないまま、彼女の背中を追いかけた。


お店に入り、通されたのは、今まで座った事のないビップ席。


入口から一番遠くにあり、白い冊子と擦りガラスで覆われているこの席は、他の席からは見えないようになっていた。


テーブルの上に置かれた、高そうなボトル。


入って来た時にも感じたけれど、彼女は通い慣れた様子だった。


一体誰を指名しているのだろう?


そんな事を考えていると、やって来たのは哲平だった。


もしかして…


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