oneself 後編
でも、それはあたしの思い過ごしだったようで。


哲平はあたしの隣に、ゆっくりと腰をおろす。


そして、間もなくして現れたのは…


花束を抱えたオーナーと、小さな紙袋を下げた聖夜さんだった。


「お疲れさま」


それを差し出しながら、二人はヒナタさんの両隣に座る。


ヒナタさんが指名しているのはオーナー?


それとも聖夜さん?


結局それは分からないまま、ヒナタさんは100万円のボトルをおろした。


「もう来る事はないけど」、そう言いながら。


そうだ、ヒナタさんは結婚すると言っていた。


結婚したら、ホストクラブになんて来れないよね。


100万円の味を噛み締めるように、あたしは紅茶で割られたそれを口に含んだ。


隣では、100万円のボトルを見つめ、哲平が肩を落としていた。


今日は1月の締め日。


あたしと会う時間を削って、必死に営業をしていた哲平。


でも今月も。


哲平は聖夜さんに、この一本の差で負けた。


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