oneself 後編
「ん…」


普段よりも少し長めのコールが続き、諦めて電話を切ろうとした時だった。


明らかに寝ていたような声で、哲平は静かに電話に出た。


「哲平…」


あたしがそう呟くと、哲平は優しい声で、「どうしたん?」、と尋ねる。


勢いでかけた電話。


話す事さえ考えずにかけた電話。


でも。


哲平の声を聞いてホッとしたあたしは、沢山の人が歩く駅構内の中で、涙を流していた。


そして。


「会いたい…」


震える声で、そう言っていた。


嘘をつかれたのに。


裏切られたのに。


それでも。


こんな気持ちで一人でいると、気が狂いそうだったから。


そんなあたしを落ち着かせるのは、哲平しかいないから。


すがるようにそう言ったあたしに、哲平は何かを感じ取ったのか、それとも良心の呵責なのかは分からないけれど。


「折り返し電話するから、ちょっと待ってて」


そう言って、少し焦ったように電話を切った。


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