oneself 後編
ガチャン…


哲平の部屋の扉が閉まる。


あれからしばらくして、哲平から電話があった。


「学校は?」


そう尋ねる哲平に、今日は休むと伝えた。


少し驚いた様子の哲平に、「会いたい」、あたしはもう一度そう言った。


そして今、あたしは哲平の部屋に来ている。


きっと急いで、タクシーで自宅まで戻ったんだろうな。


あの子には、何て言った?


身内が倒れただとか。


客に急に呼び出されただとか。


そんな嘘をついたに違いない。


そんな事を、やけに冷静に考えている自分がおかしかった。


「急にどうしたんさ?」


いつも以上に優しい顔で、声で。


そう尋ねている事に、哲平は気付いてないだろう。


あたしはテーブルの前にストンと腰をおろすと、横にあったクッションを抱きながら哲平を見上げた。


あんなにざわついていた心は、哲平が目の前にいるだけで、不思議と落ち着いている。


呆れるくらいに、哲平の事が好きなんだと、痛感する。


何も言わずに、ただ見つめるだけのあたしに、哲平はゆっくりとベッドをおりると、あたしの隣に座った。


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