oneself 後編
セットされていない、ぺったんこの髪。


でも、幼さの残るその髪型の方が、あたしは好きだった。


あたしだけが、見られる姿だと思っていたのに。


そう思うと、キューっと胸が締め付けられた。


テーブルの上にあったお茶を一口飲み、哲平はあたしとの距離を縮める。


そして。


そっと肩に手を回そうとした時だった。


フワリと鼻についた、ボディーソープの匂い。


「嫌!!」


気付けば…


あたしはおもいっきり強く、哲平の手を払いのけていた。


昨晩から、ひたすら考えて、考えても。


答えは出なかった。


打ち明けるべきなのか、胸にしまっておくべきなのか。


そして、哲平と続けていくのか、別れを選ぶのか。


こんなにも辛いのに。


こんなにも苦しいのに。


それでも。


情けないくらいに、哲平の事が好きなのに…


でも、そんなあたしに気遣うでもなく。


他の女を触ったその手で、いとも簡単にあたしに触れようとした事が。


あたしの中の、何かを壊した。


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