oneself 後編
数秒後。


「ごめん…」


もたげた頭をもっと下げて、土下座するような体勢で、哲平はそう小さく呟いた。


ブーッ、ブーッ…


こんな時にタイミング悪く、ベッドの上で震える哲平の携帯。


でも哲平はそれに目をやる事なく、うつむいたままで。


「ごめん…」


もう一度そう呟いた。


あたしは持っていたクッションを、破けそうなくらい強く握った。


どこかに力を入れてないと、その場に倒れてしまいそうだったから。


「なんで…?」


あたしは考えるでもなく、その言葉を口にした。


納得出来るくらいの理由を頂戴。


仕方ないと諦められる理由を頂戴。


そんなもの、あるはずもない事は、分かってはいるけれど。


そんなあたしの問いかけに、哲平はゆっくりと顔を上げた。


苦しそうな表情。


そんな顔しないでよ。


苦しいのは、あたしの方なんだから。


そんな哲平から、フイッと視線をそらした。


結局、その質問に哲平は答える事のないまま、時間だけが過ぎた。


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