oneself 後編
向かいの窓ガラスに映る、自分をぼんやりと眺める。


そして、それと同時に、店長の最後の言葉を思い出す。


「一回吐いた嘘や営業の仕方は、後で覆す事はできひんねん」


その通りだと思った。


お金と引き換えの、疑似恋愛。


前田さんは、本当に純粋で。


でも、勘違いも激しくて。


それでも、あたしを心の底から好きだと言ってくれ、そんなあたしにお金を使ってくれていた。


彼もあたしを思い、不安や嫉妬で眠れない日があったかも知れない。


正直、あたしはもう前田さんを騙す事に疲れ果てていた。


そして、彼の方からあたしの元を去ってくれる事を願っていた。


いつしか、あたしがお店を辞めるその時まで。


嘘とその営業を貫けなかった。


その結果が、あんな風に彼を傷付けてしまったんだ。


そのままの自分でも、十分勝負出来た…、か。


その言葉がひどく胸に残っていた。


そして、それは哲平にも言える事で。


一度持ってしまったあの子との体の関係を絶つ事は、とても難しいという事を…


あたしは何となく、分かっていた。


窓ガラスに映るあたしは、ひどく疲れた顔をしていた。


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