oneself 後編
「別れよう」


たった今。


あたしは哲平の部屋で。


いつものクッションを抱きながら。


今でも愛するこの人に、そう告げた。


「えっ…」


表情を一気に曇らせてベッドから飛び起きると、哲平はあたしの元へ駆け寄った。


「ちょっと待って、いきなりすぎるし…」


冗談だろう、とでも言いいたげな目。


でもそう尋ねる声は、ひどく震えていた。


あたしの真剣な表情から、それが本気だという事は嫌でも伝わったのだろう。


恐る恐る伸びてきた哲平の両手が、あたしの両手をふわりと包み込む。


「何…で?」


あたしは…


何も答えなかった。


そんな事。


もうお互いに、十分分かっていると思ったから。


目を細めて、不安気にあたしを見つめる哲平。


あたしは無言のまま、小さく首を横に振った。


もう、無理だと思ったから。


もう、戻れないと思ったから。


もう…


変わってしまったと思うから。


あたしも、哲平も。


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