oneself 後編
「嫌や!」


そう叫ぶと、哲平はあたしの胸元に崩れた。


「もう絶対裏切らんし」


胸に感じる、哲平の体重。


「ホストも辞めるし」


あたしの手を握り締める、その力強さ。


「お前じゃないとあかんねん、別れるとか言うなや…」


その言葉の途中途中に聞こえる、鼻水をすする音。


こんなにも取り乱す哲平を、今まで見た事があっただろうか。


何だかんだ言っても、あたしは哲平に愛されてたんだ。


そんな事を今更ながらに思うと、あたしの頬にもスーッと一筋の涙が伝った。


でもそれ以上に、哲平は嗚咽を上げながら、あたしの手を強く握りしめていた。




しばらくして、哲平は顔を上げ、あたしの顔を覗き込んだ。


何かを訴えるような表情の哲平に、あたしは最後の勇気を振り絞って。


優しく笑いかけた。


そして。


「今までありがとう…」


そうはっきりと告げた。


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