oneself 後編
眼鏡の奥の細い目をさらに細めて、彼の視線が、あたしの頭の先からつま先までを通り過ぎていく。


品定めするようなその視線に、あたしは何となく気まずくなり、質問を投げかけた。


「前田さんは、おいくつなんですか?」


彼の視線があたしの顔に移り、「24歳」と答える。


「若いですね〜!」


笑顔を作って見せるあたしに、興味なさげに彼は顔をそむけた。


今までのお客さんとはどこか違う彼の雰囲気。


何か苦手だな、この人…


あたしはとにかく、今までの席で話してきた事を繰り返した。


でも、そのいくつかの質問に、彼が一言答えるだけで、会話は長く続かなかった。


向かいの席で盛り上がる翼を、うらめしそうに見つめる。


そんなあたしの視線に気付いた翼は、波多野さんと前田さんを交互に見ながら、「二人は何の知り合いなの?」と尋ねた。


「あ〜、仕事仲間やで」


すかさず答える波多野さんが、「なっ?」と前田さんに同意を求める。


「ああ、うん」


それからは、翼が気を利かせてくれ、4人で話すようになった。


それにしても、前田さんは無口な人だった。


たまに会話を振っても、単語や返事だけで終わってしまう。


そんな前田さんに、翼もやりにくさを感じているようだった。


あたしは何を喋っていいか分からず、ひたすら黙って周りの話を聞いていた。


無理してあけたビールに、むかむかとしながら。


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