oneself 後編
この席に着いて、そろそろ20分が経つ。


もうすぐスタッフがやって来て、あたしの交代を促すだろう。


ここのお店は、フリーの場合20分ごとに女の子を替える。


1時間で3人、彼らが何時間いるのかは分からないが、場内指名を入れない限り、前田さんには次々と新しい女の子がつく事になる。


翼には申し訳ないが、場内指名はきっと無理だろう。


前田さんは、どんな女の子がタイプなんだろうか?


あたしはたいして楽しんでいる様子でもない彼の横顔を、ぼーっと見つめていた。


まもなくして、スタッフが席にやって来た。


期待はしてなかったけれど、前田さんに引き留められる事なく、あたしはその席を立った。


指名が欲しい訳じゃない。


だってあたしは、この先も働くかさえ分からないのだから。


別に、必死になる必要なんてないんだから。


前田さんの事を、斎藤さんのように、イイ人だとも思えない。


むしろ、話しにくい人だと思う。


それでも、こんな風にくやしい気分になるのは、自分に魅力がないと言われているようだったから。


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